弾丸は速く飛ぶ

秋山晶さんのことが、好きでした。
広告業界の人なら、秋山さんのお名前は、誰でも知っていますね。
「男は黙ってサッポロビール。(サッポロビール)」とか、 「考えてみれば、人間も自然の一部なのだ。(キユーピーマヨネーズ)」といったコピーで知られる広告業界の重鎮です。

私の仕事は編集者あるいはライターという、コピーライターとは似て非なる職業ですが、20代のころの私にとって、秋山さんはあこがれの存在でした。 夾雑物を徹底的に排除した知的で詩的な世界は、言葉というものに内在する力を圧倒的な魅力で引き出してみせてくれました。
よく『秋山晶全仕事』(広告批評)の巻末に載っている、右手で右目を隠したプロフィールを真似て、写真を撮ったものです。

サラダにいちばんふさわしい飲み物は水だ。


走って行った。が、兄貴もバイクも見えなかった。


マヨネーズの島で、一世紀は何時間なのだろうと、ふと思った。

…というキユーピーマヨネーズの一連のコピーは、今でも読むたびに痺れます。

しかし、秋山さんの真実の価値は「知的で詩的な世界」にあるのではありません。コピーライターの仲畑貴志さんは、「弾丸は速く飛ぶ」と題した 『秋山晶全仕事』の解説で、秋山晶さんのことを、こう評しています。

弾丸は、速く飛ぶため美しいフォームを持った。

広告コピーと出版の編集の違いはありますが、編集物でも同じことが言えます。
力のあるライターや編集者は、目的に向かって、まっしぐらに飛びます。目的地が見えているので、最終的な誌面を思い描きながら、それに向かって表現を考えます。

要するに、離陸と着陸の問題である。
いわゆる純粋表現は、離陸と着陸の勝負だと言える。鮮やかに飛び立ち、狂ったように飛翔する。闇の彼方へ消え失せようと、空中分解し、破滅破壊に至ろうと、かまいはしない。 ギャラリーは、その行方の知れないギリギリの飛行に心を動かすのだ。ところが広告表現には目的がある。宇宙の果てへ飛び去っては効果を生まない。 どこをどう飛ぼうが、必ず戻って来なくてはならない。そして完璧な着地が要求される。(『秋山晶全仕事』より仲畑貴志さんの解説)

彼の作る広告は、すべてイメージ広告である。たとえコピーで語られている内容がロジカルであっても、ひとつの原稿として視覚化され定着されると、見事なイメージ広告となる。 それは、おそらく、最終イメージの持ち様が確かであり、その上で広告全体への心づかいが行き届いているからだと思う。 コピーライターと言うよりも、クリエイティヴディレクターとしての才能がなければ不可能な技である。(前掲書)

広告業界の「クリエイティヴディレクター」は、出版業界では「編集長」あるいは「編集者」にあたるでしょう。

まさに、商業表現の場合、大切なのは「着地」です。
弾丸は、速く飛ぶため美しいフォームを持ちました。しかし、その前に速く飛ぶための理由があったのです。
私も、目的地をしっかり見据えて、速く飛ぶことを心がけていきたいと思います。

編集者の目を持つライター、hirosawa


ご挨拶

弾丸は速く飛ぶ

編集者=料理人論

取材は、どうあるべきか?

取材記事の書き方

取材にICレコーダーは必要か?

編集者・ライター・校閲者の関係

いいデザイナーとは?

編集と広告、編集者とコピーライター

クリエイターズ・ハイ

出版がネットに勝つ方法とは?

ホームページの正しい作り方

ウィキペディアは、どのくらい信用できるか?

人から立ち昇るもの

コピペ、コピペのウェブサイト

「情報商材」なるものの有効性

幼児知育教材づくりの理論(年中組)

幼児知育教材づくりの理論(年長組)

詩の言語

デザインとアート

編集者の目を持つライター、hirosawa